kanizaのブログ

コンピュータ、ソフトウェア、映画、音楽関連や家族のことなど、思いついたことを書きます。

Mind Hacks

Mind Hacks ―実験で知る脳と心のシステム

Mind Hacks ―実験で知る脳と心のシステム

春ごろに読んだ本。オライリーの本をこうして最初から最後まで通読するのははじめてだった。

僕らは世の中のありのままを見たり聞いたり感じたりしているように思っているけど、目や耳から入ってきた情報は、脳ミソが都合の良いように解釈して、僕らがそれを知覚している。その巧妙さや不思議さを実感できる話がたくさん紹介されている。

たとえば、なぜ動いているものが動いているように見えて、止まっているものが止まっているように見えるのか?「そんなの当たり前じゃん」とか思うけど、人間の眼球は常に動いているから、目に入ってくる光の情報としては、静止しているものなんてない。だから、止まっているものが止まって見えるのはわりとスゴイことなのだそうだ。

それとか、なぜ右の方で起こった物音が右で起こったとわかるのか?左右の耳に届く時間差だろうということはわかっていたけど、この本にあるように、その時間差ってめちゃくちゃ小さいんだよね。それでもなぜかわかる。

人間が他の人間のことをどう認識しているかとかってのも面白かった。人間って、やはり人間に対する観察力がものすごく鋭いんだよね。表情を読みとる力とか、視線を感じる力とか。サルの顔はぜんぶ同じに見えるのに。

この本を読みすすめていくと、たしかに、僕らは世界をそのままに捉えているわけじゃなくて、自分にとって必要な情報を脳が解釈して、それが意識にのぼってきていることがわかる。その差って普段はわかりようがないんだけど、実験すると明らかになるケースもあって、なんつーか、人間ってスゲーとか、ナマの世界ってどんなとこなんだろうとか、そもそもナマの世界なんて存在するのかとか、いろいろと考えてしまう。

この本を読んでいたころ、電車の中で「遠くのものが遠くに見える理由」というあたりを読んだあと、駅に着いて歩きはじめたら、いつも見慣れているたくさんの看板を見て「おー、たしかに遠くに見えている!」とか不思議な感覚になった。

その少し後、神戸空港に行った時に、天井の方に衛生写真を使った地球儀みたいなのが回っているのが見えた。「Google Earthみたいだー」とか思ってたんだけど、しばらくしたら時計盤の絵に変わって、実は平たい円盤に回転する映像を投影してるだけとわかった。「おぉ、オレの脳ミソ、だまされてる!Mind Hacks!!」と嬉しくなった。てっきり球体が浮いてると思った。

そんな具合に、世界がこれまでとちょっと違って見える楽しい本であった。