- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/10/28
- メディア: 文庫
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暗殺されたカエサルが、遺言書で後継者に指名していたオクタヴィアヌスが後の初代ローマ皇帝アウグストゥスになったということで、彼の時代の物語。これも文庫では3冊ある。
カエサルは元老院主導の共和体制に限界を見て、終身独裁官に就任するなどしてトップ1人による統治体制(帝政ローマ)を作ろうとしたら、反カエサルの共和政支持者らによって暗殺されてしまった。
オクタヴィアヌスはカエサルの遺志を受け継ぐわけだけど、カエサルが暗殺された反省を踏まえ、周囲には共和政への復帰を装いながら、時間をかけて着実に帝政ローマを確立する。「今日からオレ様が皇帝だ。言うこと聞きやがれー」というのはなくて、少しずつそういう統治体制に移行していったということなのですな。
カエサルもアウグストゥスも、1人による統治体制の実現に尽力するわけだけど、それが単なる権力欲からっていう感じはしない。あくまで、領土が拡大した国家ローマがよりよく機能するために、帝政が望ましいと考えた結果のようだ。精神のレベルが高い。結果的にアウグストゥスによって「パクス・ロマーナ(ローマの平和)」ができあがるわけだし。
読んでいると、彼らだけではなく、ローマ市民の誇り高さのようなものも感じる。その誇り高さが、カエサルやアウグストゥスのような才能ある高貴なリーダーを生み出し、支えたのではないかな。僕らの社会は、どんな人々を求め、支持しているだろうか。
というわけで、カエサルもアウグストゥスもものすごく立派な政治家に思える。そんな彼らが統治したローマがうらやましくも見える。実際、現代の日本人が当時のローマを目の当たりにしたらどう感じるんだろうかね。どっちの世の中も、暮らしていくのはなかなか苦労が多いんだろうな。