テクノロジストの条件 (はじめて読むドラッカー (技術編))
- 作者: P.F.ドラッカー,上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2005/07/29
- メディア: 単行本
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2005年に亡くなったピーター・ドラッカー。僕にとっては初ドラッカーとなる。この本は2005年、亡くなる数ヶ月前の発行で、新たな書き下ろしではなくて過去の書物を「技術」の観点から編纂したものということだ。2ヶ月ほど前に読んだ。
技術の歴史、社会や組織における役割や重要性などなど、幅広く語られている。「マネジメントの父」と呼ばれる著者は技術系の人ではなさそうだけど、技術に対してもものすごく深く理解していてスゴイ。特に前半の技術と歴史に対する記述は素晴らしい。たとえば3章のはじめにある記述。
科学が技術に対し何らかの影響を与えることができるようになったのは、技術の世界において技能の体系化が完了したはるか後だった。しかし、技術はその体系化のすぐ後、科学に対し直ちに影響を与えるようになった。しかも、技術が科学にもたらした変化は、科学そのものの意味を変えた。そのとき、科学は哲学から社会的機能に変わった。
科学の科学自身におる定義である「知識の体系的探求」は変わらなかった。しかし知識の意味は、頭脳に焦点を合わせた理解から、利用に変わった。科学は、それまでの形而上の問題を提起するものから、社会的、政治的な問題を提起するものへと変わった。
この、技術よって科学が「哲学から機能」、そして「理解から利用」へ変化したという指摘はとても興味深い。逆に言えば、技術の体系化以前、科学ってのはそんなに実際的なものではなかったわけだ。いまじゃ考えられない。
書名にある「テクノロジスト」という言葉はあまり聞いたことがない。「技術家」とでも言うべきか。僕の名刺には「エンジニア」と書いてあって、これは一般に「技術者」と訳される。「技術者」と「技術家」はどのへんが違うのかな、などと考えてしまう。「家」がつくものには、「作家」とか「作曲家」「探検家」なんかが思い付く。うーん、「技術家」ねぇ。
同様に本書には「技能」という言葉もたくさん登場する。「技能」と「技術」の違いは何かな。「術」がつくっていうと「手術」とか「占星術」とか「柔術」「魔術」「錬金術」とか、ちょっとフツーの人には立ち入れない領域にあるもののようなイメージがある。技術はどうかな。他の「術」に比べればわりと身近に感じられる気がするけど、やはり本来はもっとスゴいものかもしれないよね。
僕自身が深く関わっている「技術」というものについて考える良い機会となった。僕の名刺に書いてある「エンジニア」、つまり「技術者」ってのはそう簡単に名乗れるもんじゃないんだよねぇ。周囲の人からもエンジニアと認めてもらえるレベルの仕事をしたいものです。