kanizaのブログ

コンピュータ、ソフトウェア、映画、音楽関連や家族のことなど、思いついたことを書きます。

源氏物語とEmacs

大河ドラマの影響で源氏物語が話題になっている。

僕が愛するテキストエディタGNU Emacsは当初日本語を扱えなかったのだが、半田剣一さんをはじめとする方々のおかげで多言語に対応し日本語も使えるようになった。そのGNU Emacsの多言語拡張の名前がMule(ミュール)で、Muleのバージョンは源氏物語から名付けられていた。

僕が初めて使ったMuleGNU Emacs 19.28 / Mule 2.3(末摘花)だったと記憶している。その後、Muleは紅葉賀、花宴、葵、賢木、花散里まで進んだ。

Muleは00年代にGNU Emacsに完全に統合されて、2009年のEmacs 23でMule 6.0(花散里)になってからバージョンは更新されていない。

それにしても源氏物語から名付けるってセンスいいよね。

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プラトン「饗宴」を読んだ

これは読み返したくなる。さすが名著中の名著。

古代ギリシャの宴会(饗宴)で、それぞれが「愛(エロース)」について演説しあうという内容。中心となっているのは、著者プラトンの師であったソクラテスが愛とは何かを語るところ。

それぞれの演説によって話はどんどん深まっていって、エロースは永遠の美を求める原動力であり、それは生きる意味そのもの、みたいな話にまでなっていく。まさに哲学。ここでいう「美」は、肉体的・精神的・知的な美、善きものであって、いわゆる恋愛の対象よりもずっと広い意味になっている。でもそれこそが本質なんではないか、という。

難しい内容ではないが、まだまだ深く味わえるし理解できる感が満載。そしてもうちょっとマシに言語化できるようになりたい。だから読み返したくなる。

僕が読んだ岩波文庫版には訳者である久保勉氏による35ページにわたる充実した「序説」があり、作品の背景や、作中それぞれの演説の主旨とそれが作品においてどういう意味を持っているのかが詳しく書かれている。最初は「なかなか本編が始まらないなぁ」と思ってたけど、いったん読み終わってから改めて読むと、プラトンソクラテスへの尊崇の念の深さや、それがいかに巧妙に作品に反映されているのかなどがさらによくわかって楽しい。

原文がウィキソースにあるので来世では原文で味わいたいものですな。

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父とウイスキーと祖母

すいぶん前に父と祖母(ばあちゃん)から聞いた話を思い出として書いておく。

一時期、父はよく登山していた。本格的なものではなく、登山というより山登りとかハイキングといったほうがいいのかもしれない。酒が好きな父は、山頂からの景色を見ながら一杯やるのを楽しみにしていた。

ある日の朝、父は登山に出かけるために準備しつつ、山頂で飲むためのウイスキーを小瓶に詰めた。そのあと出発して、山頂についた時にその小瓶を家に置き忘れてきたことに気付いたのだそうだ。せっかくの楽しみを忘れてきてしまい残念がる父。同時に、ある心配が頭に浮かんだ。

そのウイスキーを詰めた小瓶は、めんつゆの空瓶だった。「めんつゆ」と書いてありつつも中身がウイスキーの小瓶を、台所のテーブルに置き忘れてきてしまったわけ。その日、祖母は家にいて昼食をとるはずだったので「ばあちゃんがめんつゆと間違えてソーメンでも食ってなきゃいいけどなぁ」と心配になったとのこと。当時は携帯電話もなく、連絡をとる方法はない。

ちょうどその頃、家では祖母が昼食をとっていた。そう、まさに素麺を茹でて、テーブルにあっためんつゆで食べてしまったわけですね。しかしそのめんつゆの正体はウイスキーウイスキー好きならウマいのかもしれないが、祖母にとってはとても食べられたものではなく、正体がウイスキーだとわかったわけでもなく、いったいどういうことなのか謎だったようだ。

祖母いわく「うんもねぇつゆらなーと思ったいや(おいしくないつゆだなぁと思ったよ)」。祖母は酒に強い人ではなかったが、幸いにして具合が悪くなったりすることはなく、帰宅した父から話を聞いて「そうらったがーか(そうだったのかー)」と納得(?)していたそうだ。

めんつゆとウイスキー、色が似ていないくもないし、「めんつゆ」と書いた瓶に入ってたらそりゃめんつゆだと思うよねぇ。

当たり前のこと

「当たり前のことを当たり前にやることが大切」という話を聞くことがある。

そう言われると僕などは「当たり前のことがまったくできておらずごめんなさい」となってしまう。みなさんはどうでしょうか。できてます? 当たり前のこと。

「当たり前のこと」というと「誰でもできる簡単なこと」とも聞こえるので、できていないことが愚かに感じてしまう。

この「当たり前のこと」を「基本」や「基礎」と言い変えると少し変わってくる。でも、つまるところ「基本が大切」ということが言いたいのではないだろうか。

「基本」も、ややもすると簡単なことと捉えられかねないけど、僕としては「すべてに通じる大切なこと」であると考えている。

「基本」は地味だが、様々な積み重ねの結果「基本」として認定されているのだ。「基本」こそが人類の英知の結晶なのだッ!

つまり基本は大切。当たり前。

RPG誕生50年

youtu.be

三遊亭楽天さんがRPG人生を語っている。いいですね。

今年は元祖RPGダンジョンズ&ドラゴンズD&D)」が生まれて50年だそうだ。僕はD&Dの名前は知っているけど実際に触れたことはない。TRPGを知ったのは「ファイティング・ファンタジー」のTRPG版だった。でもTRPGを実際に友だちと遊ぶには至らなかった。

TRPGはせいぜい僕ら世代だけのマニアックな世界と思っているが、最近ある現役高校生から遊んでいると聞いて驚いた。しっかり受け継がれているのだ。

僕にとってはじめてのRPGは初代「ドラゴンクエスト」だった。経験を積むと主人公が強くなっていくという紹介にシビれたのを覚えている。その時はレベルの概念を知らなかったので、もっと細かく、ほんの少しずつ強くなっていくのを想像していた。このレベルのない成長システムは数年後に「ファイナルファンタジーII」で体験することとなった。

80年代後半に流行った「ゲームブック」でもずいぶん遊んだ。スティーブ・ジャクソンの「ソーサリー」シリーズとかね。はじめて遊んだのはソーサリーの2冊目「城塞都市カーレ」だったはず。

コンピュータRPGで遊んだことあるものを挙げておく。いちおうクリアしたもののみ。

他にもあると思うけどとりあえず。

「ルーツ(ROOTS)」を見た

ルーツ」という作品については、レンタルビデオ屋さんに入り浸っていた頃に、VHSで複数巻に分かれて棚に並んでいたのを覚えていた。黒人の家族に関する話だというのもなんとなく知っていた。いままで中身を見るには至らなかったのだが、今回、あるきっかけでBlu-ray版を入手してひととおり見た。見て良かった。

なんとなく知っていたとおり、黒人の家族、しかも数世代にわたるドラマだ。物語は18世紀半ばにアフリカのガンビアに生まれたクンタ・キンテを主人公としてスタートする。その後、奴隷としてアメリカに連れていかれ、奴隷制度のもとひどい差別を受けながらもたくましく生きていくという話。原作者アレックス・ヘイリーの祖先についての、実話を元にしたストーリーだ。

人間が奴隷として、荷物のように船で運ばれ、売り買いされ、名前も奪われ、白人よりも下等な存在として扱われる様子が描かれる。おそらく実際に近いのだろう。あの状況では、白人の立場ならああいう差別的な振舞いをしてしまうんだろうな。あまりにもそれが当たり前すぎる。

ある時期まで、アメリカの奴隷の歴史は白人・黒人双方にとって目を背けたくなるものだったらしい。「ルーツ」は原作もテレビドラマも大ヒットして、奴隷の歴史に脚光があたった側面もあるようで、歴史的な意味のある作品といえる。僕もぜんぜんわかってなかったと感じた。たとえば奴隷が名前を奪われるということの意味も、だいぶ理解できたような気がする。多くの人に見てほしい。

今回、見ることにしたきっかけは、リビングで何となく「ダイ・ハード2」を流していた時に、ふじまるさんがグラント少佐役の人物に反応したことだった。グラント少佐を演じたジョン・エイモスは、「ルーツ」の主人公クンタ・キンテの成人後を演じた役者さんなのだった。そこから「ルーツ」の話が出て、名作なのでぜひ見ておくべきという話になり、配信ではなさそうなことがわかり、Blu-rayが比較的安価で手に入ることがわかり、ポチるに至った(酔った勢いもあったようななかったような)。

役者さん関連では、子ども時代のクンタ・キンテを演じたレヴァー・バートンが「新スタートレック」でジョーディ・ラ=フォージ少佐を演じていたことも後からわかった。目のところに目隠しみたいな装置をつけている人ですな。あの人がクンタ・キンテだったとはね。

あと、日本で「○○のルーツは...」と言うのが普通になったのは、この「ルーツ」がきっかけだったそうだ。ルーツのルーツはルーツにあり。

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NHK「黒澤明の映画はこう作られた 〜証言・秘蔵資料からよみがえる巨匠の制作現場〜」

録画して見た「黒澤明の映画はこう作られた 〜証言・秘蔵資料からよみがえる巨匠の制作現場〜」がよかった。

俳優の山崎努や仲代達也をはじめ、スタッフのインタビューも多数。黒澤明がどんな風に映画作りと向き合っていたのかが伝わってくる。

特にすばらしいのは40年以上にわたって黒澤明と仕事をして様々な記録を残している野上照代さん。シーンごとの撮影日や、黒澤明の動静について詳細に記録してあるんですな。重要。

そして何といっても山崎努黒澤明について語っているのが最高。俳優として演じているかのよう。演技っぽいというわけではなく、まるで台詞のように練られた言葉に感じられた。

黒澤映画が観たくなったので「蜘蛛巣城」を鑑賞。シェイクスピアマクベス」の黒澤明による映画化で、能の様式を取り入れていてとても良い。マクベスApple TV+版の映画も素晴らしかったな。見比べるのも楽しい。

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